伝説と伝統、ヴォギュエなくして深遠なるワインは有り得ない

ヴォギュエのミュジニーはただ優美なだけのワインではない。 まだ底知れぬ強さと透徹した厳しい品位を併せ持つ素晴らしいワインである。 そして謎めいた魔性のような官能的な香りと味わいに魅了されるのは 私以外にも多くいらっしゃるだろう・・・ ブルゴーニュワインの本質がここにあるといつも想うワインである。 このミュジニーは7.2haと全体の3/4と他を圧倒し、古区画のプティ・ミュジニーはモノポール(単独所有)。 年産わずか35000本を世界中のレストランや愛好家が争奪するわけだ。。。

ミュジニーの畑

砂利質の土壌と傾斜があの官能的で 優美なワインを生む
1925年以来、半世紀に渡って名声を維持してきた当主ジョルジュ・ド・ヴォギュエ伯爵は1987年に亡くなり、現在は娘のエリザベートがドメーヌを継いだ。栽培責任者にジェラール・ゴードー、醸造責任者にフランソワ・ミエを起用し、新たなヴォギュエ伝説が幕を開け完全に復活した。

フランソワ・ミエ氏
ヴォギュエを復活させた醸造家

微妙な傾斜から
きれいな抜ける酸味が生まれる

見事に色づいたピノ・ノワール
完熟したぶどうは偉大なワインに変身する

ミュジニー・・・ この畑から生まれるワインは私には特別な存在である。
それもヴォギュエに。。。
数十年前、ブルゴーニュワインを勉強しているときに、私は運よくヴォギュエの1969年物を味わう素晴らしい機会に恵まれた。 それまではワインの本で覚えたワインでしかなかった。 グラスに注がれたその色合いは輝くルビー色を呈していた。鼻を近づけると驚いたことにやさしく華やか、ヴォーヌ・ロマネのグランクリュのような圧倒的な強さはなくむしろ大人しかった記憶がある・・・
しかし、実にチャーミングで繊細、可愛らしくデリケートさが伝わってくる。 口に含むとみずみずしい果実の旨みがあり何とも言えない酸味が口中に拡がる。初めて経験する酸味だった。絹糸のような、切れそうで切れない滑らかさ、力強いというよりはエレガントで「儚さ」を感じさせてくれるワインで、心が和みやさしくなれるそんな香りと味わいは他のブルゴーニュにはない世界であった。 それから私はこのミュジニーの虜になってしまった。

 

1987年は伯爵が亡くなられた年で、一時スランプだったヴォギュエが復活したヴィンテージ。 淡いルビー色、香りは熟したベリーがドライフルーツに変わったニュアンスやスパイス、そしてこの畑の生命線でもある心地よいミネラル感、派手ではなくエレガントで引き込まれる官能的な香りは素晴らしいの一言。 果実の旨みと酸味、きめ細かいシルキーなタンニンが三位一体となりバランスが見事。 まるで気球のように大きく丸い球体のようである・・・ 余韻にはなんとも言えない果実の旨みと儚さが長く長く残る。
見事である。 ブルゴーニュワインの素晴らしさを理解していただける真のグランヴァンである。